ピラニア・ピラヤ

レースカーテン露骨な理由でかけられて二重化してるバレエ教室

にっぽんのキリスト教の祭壇に「おれにいのれ」ときりんの頭蓋

えんぴつをうごかすゆびがみられてることを苦にして死ねばよかった

刺したものすべてを腐らす針をさすと即しろくなる西瓜 かなしい

楽屋裏が襲撃される 屍体からボディソープのような液体

駆虫剤と尿にぬれたねこじゃらしがタクシー会社をにらんでいる

なめくじみたいな瓶がアパートを這ってた みどりのきみが僧侶を撃った

「町の意味がわからない」という病人に主治医、爬虫類詩集手わたす

こぶのある赤い魚があたたかい砂浜のうえでなにか言ってる

おぼえてることがくやしい音楽のひとつひとつをわすれるために

廃村の井戸のちかくに落ちていた稲妻みたいな工藤の工の字

台風の日に玄関に落ちていた数珠を田んぼに沈めて帰る

敵将の首をぎょうざにつつみつつ けっして燃えない城に住みたい

デイケアでドリルの音だけききながら魔法陣しか書かないおとこ

揺れるほかにはとくになにもせず僕が死ぬのを待っている山

区役所の地下のみどりの階段の蜂のぶつかる壁 熱中症

二回忌は電撃的に到来する 口腔(くち)の病気がはやる朝廷

岩浜の空でかもめがうばいあう魚籠をみているひと 失踪者

草原にしろい臓器が溺れてて人と肺話が成立しない

めがねをしてる変な子どもが洪水の歌をうたって帰ってしまう

地球儀の病んだこどものあざらしが身体ほしてる位置におおあな

可能的無縁仏の少年は森恐怖症 ピラニア・ピラヤ

又貸しの拳銃みたいにぐにゃぐにゃの偽史をにぎって死ぬときのゆび